大腸がんコラム Vol.4「大腸CT検査の認知と受診状況についての調査アンケート結果の集計進捗報告」
当院ではメルマガ会員やLINE登録をいただいている方々へ向け、定期的に情報の発信を行っています。
昨年の10月に大腸CT検査における意識・適正価格の調査に関するアンケートをインターネットで行ないました。
ご協力いただきました皆様ありがとうございました。
集計の経過をご報告します。
調査の概要と回答者の属性
大腸がんは早期に発見され早期に治療した場合の「5年生存率」は90%と、早期発見・早期治療が重要ながんですが、そのことを認識している方は3割程度とされています。
1)オリンパス社:胃・大腸がん検診と内視鏡検査に関する意識調査白書2024
精密検査の受診率も大腸は他のがんに比べると低く、大腸検査に対する抵抗感や負担のイメージが原因とされています。
今回の調査を通じて、大腸検査、特に大腸CT検査の認知度や受診傾向を探りました。
調査概要
調査期間:2024年10月
調査目的:大腸CT検査に対する意識や受診傾向の把握
回答者の属性
当院メルマガ、Line等に登録いただいている13000人の方にアンケートを依頼し、5分程度で終わる内容に回答いただきました。アンケートに回答いただいたのは304名で、男性が159人、女性が145人で若干男性が多い比率でした。回答者の多くは人間ドックを受けることの多い「40代」の方が60人(20%)、「50代」の方が138人(45%)、「60代」の方が78人(26%)でした。

Table.1 回答者の性別・年齢構成
健診・人間ドック受診頻度
健診・人間ドックの受診の頻度を問うアンケートの結果を下記に示します。
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Fig.1 【検診の受診頻度】人間ドックの受診間隔
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Fig.2 【検診の受診頻度】企業検診の受診間隔
個人での健診・人間ドック(いわゆる人間ドック)受診の頻度についての回答は、「受けたことがない」が119人(39%)と最多で、「毎年受けている」「受けたことがある」がそれぞれ69人(22%)、「定期的に受けている」が40人(13%)でした。
企業補助を利用した健診・人間ドック(いわゆる企業検診)受診の頻度についての回答は、「毎年受けている」が192人(63%)と圧倒的多数でした。次に「受けたことがある」が53人(18%)、「受けたことがない」が30人(10%)、「定期的に受けている」が24人(8%)という結果でした。
※人間ドックおよび企業検診は当院の受診に限らないとして回答いただいています
大腸検査受診頻度
大腸の検査の受診・検査の頻度を問うアンケートの結果を下記に示します。
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Fig.3 大腸内視鏡検査の受診歴・頻度
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Fig.4 大腸CT検査の受診歴・頻度
大腸内視鏡検査の受診・検査頻度についての回答は、「受けたことがない」が132人(44%)で、続けて「受けたことがある」が120人(40%)、「定期的に受けている」が36人(12%)、「毎年受けている」が12人(4%)という結果でした。
大腸CT検査の受診・検査頻度についての回答は、「受けたことがない」が205人(68%)、続けて「受けたことがある」が80人(26%)、「定期的に受けている」が12人(4%)、「毎年受けている」が5人(2%)という結果でした。
大腸CT検査は比較的新しい検査ですが、今回のアンケートでは回答者全体の32%の方が大腸CT検査の経験があるという結果でした。大腸CT検査を実施している医療機関もまだまだ少ないため、大腸内視鏡検査の経験者の割合の168人(55%)と比較すると少なくなっています。
大腸検査の意識調査結果
大腸CT検査と大腸内視鏡検査の価格と精度が同等だった場合、どちらを選びますか?という質問についてのアンケート結果を下記に示します。

Table.2 回答者の大腸検査歴

Fig.5 回答者(全体)の大腸検査の選択
81%(247人)の方が大腸CT検査を選択しました。
過去に大腸検査を受けたことがない方の中では90%(92/102人)と、大腸の検査を未経験の方はより大腸CT検査を選択する傾向が強いようでした。
大腸CT検査を選択した具体的な理由についての回答では「内視鏡検査は身体への負担が大きい」事や「CT検査の方が負担が少ない」との意見が多数見られました。そのほか内視鏡検査の「事前の準備の大変さ」を指摘する意見があり、「たくさんの下剤を飲む必要がある」といった不安を多くの方が強調されていました。大腸CT検査の手軽さが評価されているようです。また「内視鏡は痛い」という意見が多く、「過去に内視鏡を受けたが非常に苦痛だった」という体験談もありました。これに対し、CT検査は「痛くなさそう」との意見が多く、心理的な負担が少ないイメージがもたれているようです。そのほか「内視鏡は恥ずかしい」という意見や、CT検査は「検査時間が短い」との意見があり、内視鏡検査に比べて「時間的な負担が少ない」ことも選択した理由になっているようです。
一方で、19%(57人)の方が大腸内視鏡検査を選択しました。
大腸内視鏡検査を選択した具体的な理由についての回答では、多くの回答者が「ポリープが見つかった場合、その場で切除できる」ことを理由に内視鏡検査を選ぶ意向を示していました。そのほか内視鏡検査は「直接観察可能」であり「内視鏡の方がしっかり見てくれそう」と精度の高さが評価されていて、「何処でもやっている検査」「自治体によって内視鏡検査はがん検診の補助もある」という情報も内視鏡検査の信頼性を高めているようです。また内視鏡検査とCT検査の「事前準備の負担は同じ」と認識されている方もいました。またCT検査に対する「被ばくリスク」への懸念も内視鏡検査が選ばれる理由となっているようでした。
大腸CT検査の被ばく量について
大腸CT検査の被ばくリスクについてはこのコラムでもあまり触れてきていなかったので、補足したいと思います。
一般的な大腸CT検査の被ばく線量は約5~7mSv程度とされています。当院の大腸CT検査の場合、CT装置に搭載された被ばくを低減する低線量技術を用いることで被ばく線量は1回あたり約6mSv程度となります。これは身体に影響を及ぼすとされる放射線量100mSvを大きく下回っています。また100mSv以下の放射線を受けた場合のがん要因・リスクというのは生活習慣によるがん要因・リスクと比較しても非常に少ないものです。

Fig.6 がんになるリスクとその要因 (原子力総合パンフレット2024年度版より引用)
大腸CT検査はどんな検査か
大腸CT検査は内視鏡検査に比べ下剤の服用量は半分以下、検査時間も10分程度で鎮静剤なども用いないため検査後すぐに日常生活に復帰可能です。精度も内視鏡検査と同等との報告が多数あります。また当院では大腸だけでなく、周辺の肝臓・膵臓・胆のう・脾臓・腎臓などの評価も腹部CT検査と同じ精度で取得・提供しています。
当院では大腸CT検査の保健収載がされた2012年から大腸CT検査を導入し、保険診療と人間ドックを合わせて1万件以上の検査を実施してきました。大腸がんや大腸の検査について不安を感じられている方は一度、気軽に受けることのできる大腸CT検査で、ご自身の大腸の状態を把握してみるのはいかがでしょうか。