子宮頸がん
子宮について
子宮は、骨盤内にある洋ナシを逆さにしたような形をしています。上部は左右の卵管に、下部にある子宮口は膣につながっています。子宮は大きく子宮体部と頸部の2つにわかれます。
子宮の外側は子宮筋層という筋肉でできており、その内側は子宮内膜という粘膜で覆われています。この子宮内膜は月経周期にともなって、増殖、剥離を繰り返します。剥離した子宮内膜は月経血として膣から排出されます。また、受精卵が子宮内膜に着床すると妊娠が成立し、受精卵を発育させるベッドのような役割をします。
子宮頸がんとは
子宮頸がんは子宮頸部や子宮頸管の上皮から発生したがんです。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされることがわかっています。HPVは主に性交渉によって感染し、性交渉経験のある多くの女性が一度は感染するといわれている、ありふれたウイルスです。 通常はHPVに感染しても、自己免疫力によって消失されます。しかし、一部の人では消失されず感染が長期間持続してしまうことがあります。この場合、がんの前段階を経て、子宮頸がんに進行する危険性がないとはいえません。
持続感染すると、子宮頸部の細胞にHPV感染による変化が現れます。この変化を異形成といいます。異形成は軽度→中等度→高度と時間をかけて進行し、最終的に子宮頸がんになることがあります。
軽度~中程度でしたら、そのまま正常な細胞に戻る可能性もあります。しかし、高度まで進行した場合は、子宮頸がんに進行する確率が高くなります。
子宮頸がんは、近年特に若年化が目立ち、20~30歳代で発生するケースが増えてきています。
子宮頸がんの症状
子宮頸がんは初期ではほとんど症状がありません。
がんが進行してくると下記のような症状が現れてきます。
- 不正出血
- 性交後の出血
- おりものの異常(茶褐色、黒褐色のおりものが増える)
- 月経の量が増えたり長引いたりする
- 下腹部や腰の痛み
子宮頸がんは初期では自覚症状はありませんが、子宮頸がん検診で早期発見することができます。また、ワクチンによって予防が可能な唯一のがんです。しかし、すべての型の発がん性HPVの感染を防ぐものではありませんので、異常を見逃さない為、ワクチンを接種した後も定期的な子宮頸がん検診の受診が必要です。
万が一、子宮頸がんと診断されても初期の段階で発見することができれば、子宮頸部の異常な組織だけを取り除く手術(円錐切除術)によって、子宮を温存した治療も行うことができます。
20歳以上の女性では、2年に1回、細胞診による子宮頸がん検診の受診が推奨されています。
子宮頸がんの検査
細胞診
子宮頸部(外子宮口の付近)を綿棒、ブラシ、ヘラのような器具でこすって細胞を採取する検査です。この検査で生じる痛みは、通常それほど強いものではありません。
子宮頚部細胞診のみの検査では、異常を見つけられる確率が約70%程度とされています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)検査を併用することで、前がん病変の見逃しをほぼ0に近づけます。
子宮頚部細胞診で採取した細胞で検査が可能ですので、異常がなければ3年に一度のペースで受診をお勧めしております。
内診
子宮や卵巣の状態を、膣から指を入れて調べる検査です。
組織診
細胞診で異常があった場合に、がんが疑われる部分から組織を切り取り、診断を行います。痛みを感じたり、出血することがあります。
コルポスコープ診
コルポスコープという拡大鏡を使い、子宮頸部の表面を拡大して観察する検査です。通常、組織を採取する際に使用します。
超音波検査
主に、超音波検査の器具を膣に入れて子宮頸がんの性状をみたり、腫瘍と周囲の臓器との位置関係などを調べる検査です。
CT検査・MRI検査
がんの転移の有無、周囲臓器への広がり診断に有用です。特にMRI検査は腫瘍が子宮の筋肉にどの程度まで食い込んでいるか、卵巣の病変の有無といった局所の評価に有用です。
子宮頸がんの治療
治療は、がんの病期、腫瘍の大きさ、妊娠の希望の有無、年齢などによって異なります。
早期子宮頸がんの一般的な治療法は手術です。
がんが早期の場合、子宮口の入口を一部切り取る“円錐切除術”を行うことが一般的です。
がんがある程度進行していた場合は、病変の程度によって、子宮全体を切除する“単純子宮全摘術”、子宮と膣の一部、基靭帯の一部を切除する“準広汎子宮全摘術”、子宮と膣の一部、基靭帯、リンパ節を切除する“広汎子宮全摘術”など切除する範囲が変わってきます。
また、がんの性質や年齢、妊娠・出産の予定などを考慮し、放射線治療や化学療法を組み合わせることもあります。
子宮頸がんの病期
子宮頸がんの予防
子宮頸がんの病期
子宮頸がんはごく初期であれば、レーザー治療や円錐切除など子宮を残した治療が可能で、その治療成績も良好です。子宮頸部の組織への浸潤がある場合でも軽度で早期の場合、比較的治療成績の良いがんといわれています。
早期には症状がほとんどないがんですので、早期発見のためには子宮頸がん検診を受診することが有用です。